ポケモンへの歪んだ憧れ?実はダークな映画だった!?(ネタバレあり)

新旧ポケモン世代を熱狂させた、ハリウッド版実写ポケモン映画『名探偵ピカチュウ』。

「父の死の真相を追う」というノワールミステリーとポケモンバトルが融合したストーリーは大人から子どもまで楽しめる安心安全設計で、ポケモンを全く知らない人でも問題なく世界観に入っていける親切さも兼ね備えています。

ところが、黒幕の真の目的や理想の街と言われる「ライムシティ」の持つ闇など、明るく楽しいポケモン映画でありながら、どこかダークさも含んだ奇妙な歪みのある映画でもあると思うのです。

今回は本作が持つ「歪み」について掘り下げていこうと思います。

あらすじ、見どころなどは過去の記事を参考にしてください。

以下、映画を観た人向けに「ネタバレあり」で書いていきますので未鑑賞の方はご注意ください。

「ポケモン」とは何か?

「ポケットモンスター」通称ポケモンは、ゲームボーイ用ソフトとして『ポケットモンスター赤』『緑』が1996年に任天堂から発売されたのがはじまりです。「2バージョンのソフト」「モンスターを集める」「プレイヤーは戦わない」といった独自性と攻略性の高いシナリオ、ポケモンたちのキャラクター性が世の子どもたちを夢中にさせ、現在では20本以上のタイトルが売り出されています。アニメや漫画、カードゲームなどのメディアミックス作品として、日本国内のみならず世界でも人気を博しています。

ポケモンの大きな特徴として挙げられるのは、収集、育成、対戦です。とくに「ポケモントレーナ―」と呼ばれるプレイヤー同士の対戦(ポケモンバトル)はこの作品の根幹をなすシステムであり、バトルに勝つことがプレイヤーの大きな目的と言っても過言ではありません。

つまり、ポケモンはただの愛玩の対象ではなく、戦うための「武器」でもあるのです。

ポケモンの理想と現実を内包した街「ライムシティ」

さて、映画の舞台となるのはポケモンと人間が共存している「ライムシティ」。そこにはポケモンを捕獲するためのポケモンボールは存在せず、ポケモンたちは人間たちとパートナー関係を結び、ある意味ペット、あるいは家族のように暮らしています。

「みずでっぽう」で消火活動するゼニガメ、四本腕を使って交通整理を行うカイリーなど、ポケモンたちはバトル要員ではなく労働力として扱われている点も興味深いです。

2016年に解禁された「ポケモンGO」が世界中で社会現象となったことからもわかるように、「ポケモンが現実にいる」というこの世界観はポケモンを愛する人々にとって理想の形ともいえるのでしょう。

しかし、そもそも前述の通り「ポケモン」は戦うことこそがその存在意義であるとも言えます。

ポケモンの理想を描いた本作でもその呪縛から逃れることはできず、街ではアンダーグラウンドな非合法的「地下バトル」が行なわれていることが明らかとなります。このシーン、面白おかしいドタバタコメディの様相で描かれていますが、普通に考えたらかなりダーティな表現だと思うんですよね。ノワール映画によくある闘犬ですよ、あれは。

本作ではこの問題が解決されたかどうかは描かれていませんが(一応警察が介入する描写はある)、おそらくこの街から「地下バトル」がなくなることは永遠にないでしょう。実はポケモンの「現実」を突いている描写だと思いますね。

ポケモンになりたい!?

そもそもポケットモンスターは「大切な相手を戦わせる」という大きな矛盾をはらんだコンテンツでもあります。アニメなどでは時として上記について葛藤が描かれることがありますが(劇場版アニメ『キミにきめた!』など)、大枠ではその問題に踏み込むことはありません。

けれど、本作で特に面白いのはビル・ナイ演じる黒幕がその一歩先に行こうとする点です。

なんと自分の精神をポケモンに転移し「ポケモンと一体になる(!)」ことで、自らがバトルする展開となるのです!!

いやー、この発想はなかった。斬新。

これは、これまで「友だち」だの「なかま」だの言っておきながら自分は安全圏でのうのうとポケモンに指示を出してきたトレーナーたちへの完全なるアンチテーゼなのではないでしょうか。「がたがたいう前にお前が戦え!」という…(とはいえ、ビル・ナイの目的は不死だったわけですから、ポケモンを道具にしているのは変わりはないのですけれど)。

ミュウツー化したビル・ナイ(役名:ハワード・クリフォード。ポケモンの理想郷「ライムシティ」の立役者)は、この「進化」をシモジモの人間たちへも与えようという慈悲の心で「意識転送ガス」を街中にばらまく。次々にポケモンと一体となる人々。いい迷惑(笑)。

しかし、ピカチュウと主人公の活躍によりビル・ナイは転移装置をあっさり外され(その際に「なんてことするんだ!」と叫ぶ。こっちのセリフだよ)、企ては失敗し、大団円を迎えます。

とはいえ黒幕のこの行動は「ポケモンになりたい」というポケ好きの歪んだ欲望を描いているようにも思えて、どうにも断罪しかねるところではあります。

愉快なエンタメ映画でありながら、実はポケモンの「パートナーを戦わせる」という矛盾にも言及し、ポケモンへの歪んだ欲望も内包している本作。実写というだけではなく、日本では作られることのなかった視点で描かれたまったく新しい「ポケモン映画」と言えるのかもしれませんね。

この記事を書いた人
みんと

映画大好きおばちゃんです。好きなジャンルはホラー、SF。怪獣(ゴジラ)、恐竜、アニメも好き。どうぞよろしくお願いします!

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